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合気道稽古所感 七段 斎藤守弘 (合気道新聞第83号より/昭和42年)
合気道について、この紙上をお借りして少し述べさせていただきます。
第一に稽古の心構えですが、初段までは初心者であるということです。初段になって始めて初歩に入るのです。一年位で合気の理がどんなものであるか見当がつく訳がありません。やっと少し動けるようになり、話もわかりかけて二段の允可が許される訳です。初心者は余り理屈にこだわらず体で修得するよう、耳で教え受けようと思わず、目で習い覚え体で試すことです。
第二は基本を大切に守らなければなりません。一教から五教までガッチリ固い稽古を守り第一番に体を練り鍛えながら、完全な基本の技を身につけることです。気の流れの動きは裏技で修得できます。軽い稽古を気の流れと考えたならば取返しのできぬ大きな間違いです。そういう稽古は舞にもならぬ手踊りのたぐいです。こんなことで飛ぶであろうかと常に疑問に思うくらいでなくてはなりません。信じられぬ技は師範に質問すべきです。
第三は合気の剣及び杖の重要性を認識していただきたいのです。合気道に限り体捌きも剣杖の体捌きもすべて全く同じであります。...体術のときと、剣杖の体捌きが相違しているときは、更に一致するよう研究しなければなりません。舞上がり舞下がり、舞上がるときは大地から湧き上がるように進み入り円形に体を変化すれば、相手はなんの抵抗もなし得ずして巻き込まれてくるのです。むずかしい合気の理は体で実際に試し悟って始めて意得するのです。
そして始めて合気の話が自然とできるのです。講釈ばかり上手でも実力が伴わぬでは、その講釈はウソか受売りです。各個人が各自の感じて悟り得て修得したことでも説明ということはなかなかできるものではありません。一生懸命に説明しようとしても十分の一も思うようにできないのが普通でしょう。
武道は絶対に強くなければなりません。合気道においても特にです。理論的な研究は勿論大切ですが、理論に走り過ぎぬようにしていただきたいものです。私は現在まで師に質問をしたことはありません。稽古は良く師範の動きを目で確かめて体得するよう希望いたします。(合気会本部道場師範)